娘たちが結婚するときに連中に恩着せがましく読ませる日記

2023組5年生春スタート日能研女子父の備忘録(姉2021終了)

階層分化への憂い

※昨年の春に一度アップしたけどなんか日和ってお蔵入りしていた記事です。

昨今の情勢がますます危機的であることを憂慮し、GWということで再掲してみました。

 

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突然ですがカリスマ読者のみなさん。

東大進学実績の代わりに医学部進学実績を学校評価バロメーターにするケースが増えているけど、わたしはとっても疑問なんですよ。

 

国立はともかく、私立の医学部に入れられる家庭なんてごくわずか。

リムジンリベラルの典型みたいな某女性学者が東大生に

「がんばったら報われるとあなたがたが思えることそのものが、あなたがたの努力の成果ではなく、環境のおかげだったことを忘れないようにしてください」なんて祝辞を述べて、よくぞ言ったなんて左系の人から喝さいをあびてました。

たしかにそのとおり。貧乏な家の人が東大に入るのはまだまだ可能だともいえるけど、貧乏な家の人が医者になるのは物理的にかなり難しいといわざるをえない。

 

そんなものを実績の尺度にしても、単なる「うちの学校は上流階級の子弟が多いざます」という自慢にしかなんないと、ニュータウン団地の子でローワーミドルクラス出身のわたくしとしては思っちゃうわけですよ。

 

それにしてもこのお医者人気、若干ゆがんでないですかね。

たしかに相続税のクソ高いこの国で自分の財産を子孫に残す最も確実な方法は教育です。だとすると、資金面の参入障壁がめちゃくちゃ高くて、なおかつ資格に希少性があって、さらにいうと、いったんなっちまったらそれだけで上流確定という医師という仕事は、資産継承としてはこの上ない条件を保持しているように思えます。

 

その一方で、昨今よく耳にするキャリア官僚のレベル低下が深刻だというニュース。人気もないらしい。

わたしはこの手のエリートが苦手で、「勉強頑張ってたくさん暗記していい大学いって役人になりました!」みたいな権威に無批判な同世代人を若いころはめちゃくちゃバカにしてきたんだけど、それは自分自身がアウトサイダーあるいはマイノリティであるという強烈な自覚があるからそうしてるだけで、優秀な人が公のために頑張って働いてもらって初めて言える戯言であることもまた自覚してきたわけです。

 

かつて世界最優秀とされた日本の官僚機構が急速に劣化しつつあるのは五輪対応やコロナ対応やら山のように発生した法案の誤表記やらで認めたくなくても想起させられてしまいます。

 

また各種産業を支える技術系研究者の成り手も急速に減っているらしい。

 

もちろんお医者は立派な仕事で今もたくさんの人が救われてます。それは分かってる。わたしも救われてる。でもお医者になりたがる人が増えた理由はそれとはおそらく違う要因でしょうって話です。

投資銀行とかコンサルとかも同様でそりゃみんな立派なお仕事でグローバル化した資本主義社会を回していく大事なパーツですが、猫も杓子も群がるたぐいの職種ではないし、キッズが「将来なりたいもの」の作文で書くような巨人の星でもないでしょう。

 

キャリアだけじゃなくて科学者でも政治家でも作家でもなんでもいいんですが、優秀な人が名誉よりも手っ取り早く金を稼げそうな職業に群がる社会って未来がなさそうにみえるんですが、さてどうでしょう。

 

(終わり)

 

補足:

女性の場合はちょっと話が違う部分があります。

2050年ならいざしらず男女共同参画にむけた社会システムの整備が遅れている2020年代の日本においては、優秀な女の子が東大から官僚あるいは総合商社やコンサルあたりに入ったとしても出産育児でキャリア形成が大きくゆがむことになります。もちろんたくさんの女性がその壁を突破して現在進行形で活躍してらっしゃるけど、その苦労は男性の比じゃない。それにくらべて資格系のお仕事は復帰も楽だし、人気が集まるのもうなづけます。

なので、あまり優秀でない長女にも、とりあえず優秀になってもらって防衛医科大学自治医大にいっていただいて、お医者様になってもらって、かかった教育費を年利30%の利息付き(複利)で返していただきたいなあって思ってますが、本人は救世主願望をますます強めているようなのであきらめてます。

 

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2022年付記:

ちなみにかつて救世主になるつもりだった長女は、船戸与一の小説に出てくる主人公の少年みたいに世間に絶望してすっかり闇落ちし、今では将来何になるのかと聞かれても「飯を食い、やがて死ぬでしょう」などと某軍師みたいなことをいって煙に巻くようになってしまいました。かなしい!